松尾 直子

Matsuo Naoko

モチーフを前にして感じた空気感が滲み出るような瑞々しい作品を描いていきたい

  • 生い立ちやアーティストとしての活動歴などを教えてください。
  • 23歳の時イギリス留学し、その翌年にイギリスからイタリアに住まいを移し、フィレンツェにある美術学校で3年間油彩を学びました。卒業後は尊敬する先生方が主催するサマーワークショップに参加しました。6月〜8月にかけてフィレンツェ郊外の田舎で仲間たちと共同生活をしながら制作に打ち込んだ経験は、今でも私のアーティストとしての核になっています。帰国後は油彩・水彩の講師を務めながら個展で作品を発表しています。
  • 新しい作品を生み出す時は、どんなきっかけで作り始めることが多いですか?
  • 感動を伝えたいと思えるモチーフとの出会いが、制作意欲に繋がります。
  • 作品を制作する前に準備する事や、何か決まったルーティーンなどはありますか?
  • 瞑想です。目の前にあるモチーフと対話するような気持ちで観察し、仕上がりのイメージを作ります。
  • 作品を制作する場所はどの様なところですか?
  • 写生以外は、自宅にあるアトリエです。
  • 作品を制作する際に、どの様なところに気をつけていますか?また最も気を配ったり、苦労する点があれば教えてください。
  • 一番大事にしていることは光と影に気を配りながら、モチーフをよく観察することです。そして塗り絵のような硬い絵にならないように下書きは最小限に留め、まずは主役の最も美しい色から置くようにしています。その際にモチーフと背景を切り離すようなことはせず、空間ごと同時に描くように心がけています。目には見えなくても、モチーフを前にして感じた空気感が画面から滲み出るような、瑞々しい作品を描いていきたいと思っています。
  • 新しい作品を制作しよう、と思う時はどの様な時でしょうか
  • 描いてみたいモチーフは一生涯追いかけても追いつけないほどあるので、いつでも新しい作品を制作したいと感じています。
  • あなたにとって作品/アートとは何ですか?
  • 私にとってアートはコミュニケーションです。そこには国籍や言語の違いなどありません。そしてコミュニケーションは、双方向のものであるということを忘れないようにしています。独りよがりの一方的な表現をするのではなく、いつもその向こう側にいる人を思って筆を持っています。
  • 制作する風景はどのように決めていますか?
  • 基本的にアトリエで制作していますが、現地だからこそ描けるライブ感のある作品はやはり魅力的です。写生に出かけた時は時間をかけた大作ではなく、躍動感のある短時間スケッチを出来るだけたくさん描いて、写真と共に持ち帰るようにしています。大きな作品はスケッチをもとに、アトリエでじっくり描き起こしていきます。
  • 日本とヨーロッパで、風景の見え方や色合いの違いはありますか?また数ある風景の中で、一番のお気に入りの風景はありますか?
  • 訪れた国や地域によって、空気の色や質の違いのようなものを感じます。もちろんそれは気候や風土による要因が大きいと思いますが、それだけではないように感じます。その地で脈々と受け継ぎ築き上げてきた歴史や文化、そしてそこに住まう人々の気オーラのようなものなど、様々な複合要因でそれぞれの国独自の空気色を作り出しているように思います。留学時代は長い夏休みやクリスマス休暇などを利用してバックパッカーでヨーロッパ各地を巡ったり、フリーツアーなどを利用してアフリカなど様々な国を旅しました。どの国もその国独自の魅力があってお気に入りを一つに絞るのは大変難しいですが、共通して言えるのは都会の喧騒よりも、自然豊かなのんびりとした田舎が好きです。
  • コミュニティクラブたまがわでは透明水彩を教えていますが、レッスンではどんな事を一番伝えたいですか?
  • これは透明水彩画に限ったことではないのですが、上手な絵と良い絵は違うと思っています。お教室では多くの方がいらっしゃるので少しでも恥ずかしくないような作品を描かなくてはと気負ってしまうこともあると思うのですが、大切なことは楽しむことです。苦しんで描いた絵には重たい気が宿ります。感動し描いた絵には、仮にそれが拙い作品であっても喜びに溢れ感動が伝わってこちらも幸せな気持ちになります。技術的なことは経験を重ねることで必ず向上します。どうか肩の力を抜いて、絵具と水と友達になるような気持ちで描いてもらえたら嬉しいです。